長期症例からインプラントを考える

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長期症例からインプラントを考える

過日、世界的に著名なインプラント治療の第一人者の講演を聞きました。
その内容を抜粋いたします。

オッセオインテグレーション(インプラントと顎の骨の結合)を基本とする近代インプラント治療が我が国に根づいてから28年が経過しました。最近は長所のみではなく、マイナスや問題点も取り上げるようになりました。
治療法のメリットだけが強調されるのではなく、正しく短所も周知されることは、患者さんにとって歓迎すべきことだあると思います。

10年、20年あるいはそれ以上にわたり安定して使用できるインプラントですが近年では長期間の安定よりも早期のインテグレーションを獲得することや、機能(咀嚼能力)よりも審美(見た目の美しさ)に重点が置かれすぎている傾向があります。
それにより、短期(概ね5年以内)の使用には十分に耐え得りますが、長期になるとインプラントが脱落する危険性が高くなるということです。

インプラント表面にハイドロキシアパタイト(歯や骨を構成する成分)をコーティングしてあるインプラントが市場の割合を増しつつあります。
確かに、骨としっかりと早くインテグレーションしますが、実験のデータでは、全ての種類ではありませんが、インプラントの表面からハイドロキシアパタイトが剥がれている物も見受けられます。
製造技術や品質管理の難しさも指摘されています。

インプラント埋入するための床を形成する時にドリルを使用します。
切削時に顎の骨が火傷しないように、生理的食塩水(体の浸透圧に合わせた水)を使って冷却しますが、ドリルの中から水を出す方法(内部注水)と、外からドリルに水を当てる方法(外部注水)があります。
最近は前者の方が主流になっていますが、冷却効率を考慮すると後者の方が優れていると、演者は指摘しています。

インプラントを快適に長期にわたり使用するには適切なフィクスチャー(顎の骨中に入る部分)使用機材、手術手技およびインプラント治療に対するコンセプトが要求されている事が理解できます。

< 2011/07/29 >

顎顔面(顎と顔の骨)の成長について

以前、歯列不正の原因について考えました。
今回はこれに関連する、顎顔面の成長について考えてみます。

我々の住む世界において、表面の問題は、その中に存在する本質的問題を解決しなければ、本当の解決が得られないという一般的原則が存在します。
この原則論に当てはめてみると、歯列不正は表面の事象であって、本質的には顎顔面の成長に問題があることが明らかになってきました。私の日常の診療でも感じることは、歯列不正の多くはやはり顎顔面の成長発育に問題があります。また、学校における歯科検診などでも感じることですが、顎が小さくほっそりとした子供が多く、やはり歯列不正が以前に比べて比率的に多くなった気がします。
もし、顎がしっかりと前方成長していれば歯列不正は起きません。例えば第1大臼歯は乳歯の後ろから生えてきます。乳歯が生えた後に顎が前方へ成長しないと第1大臼歯が生えてくるスペースがありません。そこで斜めに生えたり、向きをかえたり、外側や内側へはみ出します。場合によっては骨の中にもぐってしまい生えてきません。正常咬合を得るには頭蓋をを含めた顎顔面領域の前方成長が必須です。
それではどのようにすれば顎が正しく成長するのでしょうか。バイオブロック療法を考案したDr.J.Mewは以下のように指摘しています。

よ1. 口唇閉鎖(口を閉じる)すること
2. 上下の歯が軽く接触していること
3. 舌が口蓋(上顎の舌で触って平らな部分)に接触していること

これらの条件を満たすとき、顎は前方に成長すると述べています。

次にこれらを阻む要因について考えてみます。
アレルギー、喘息などの呼吸器疾患を持つ場合や扁桃肥大などを持つ方は、気道の狭窄が起こりやすく口呼吸になりやすいため口唇が閉じにくい状態になります。
また、舌が大きい場合も舌を上下の歯の間に介在させるため口が開くようになります。そして、上の顎の前歯を押すようになれば上顎前突(いわゆる出っ歯)になります。
これらの問題を解決する一つとしてバイオブロック療法が考案されました。

< 2011/07/24 >

咬み合わせ(咬合)とは何か

咬合とは日常的に良く使用されている用語ですが、定義が確りしているものではありません。

歯科医師によっては、十人十色の咬合に対する考え方があります。

咬合咀嚼理論の原点は、「歯の咬合面(上と下の歯がかみ合う面)は一生不変ではなく、年齢とともに変化し、年齢に合った咬合面の形こそ、その人にとって最も適した形態となる」というところです。そこから導かれる咬合から、正常咬合や異常咬合が定義づけられます。

歯や顎の骨および筋肉などの周囲組織に関して生来備わっている形態、そしてそれからが年齢とともに変化する様相を機能の面から考え、その意味を追求することは、咀嚼運動の本質になります。

歯の咬合面は咬頭(山の部分)咬頭窩(谷の部分)で構成されています。
10歳代の咬頭傾斜角は30~35度あります。年齢とともにこの頭は摩耗してしていき、平坦になって行くのが自然の流れ(加齢現象)です。

多くの咬合理論は萌出(歯が生えてくること)直後のような咬頭傾斜が高い状態の歯について解説されているものが殆どで、中高年の歯のように摩耗した状態と関連付けて論理展開したものはありません。

この「年齢とともに変化する咬合面の形態にこそ、咬合の最も重要で基本的な原則が存在する」のです。
当院ではこれらを考慮した咬合治療を行っております。

< 2011/07/20 >